頑張ってね〜、と薫先生に送り出された私達は車を降りて外に出た。

午後の部最後の種目である高等部全員参加の模擬修祓は規模が大きいのもあって別の会場で行われる。

今回私たちが連れてこられたのは何処かの山奥だ。車を降りる前から嫌な感じが肌にヒリヒリと伝わって来ていたけれど、降りてすぐに納得する。黒い靄が分かりやすく至る所に広がっていた。

この競技用に先生たちが用意した残穢だ。


「ヤバいなこの山。競技じゃなかったら絶対入りたくねぇよ……」

「確かにね。長居したら気が狂いそう」


出場する一年生たちが苦い顔をしながらそう呟く。

確かに競技じゃなかったら私も近付きたくない。


チームを組む鬼市くんに声をかけた。鬼市くんは目を細めて小さく微笑む。


「よろしくな巫寿」


右手を差し出された。

なんの手だろうと一瞬考え、「頑張ろうな」の握手なんだとすぐに理解し差し出す。


「うん、よろしく。頑張ろうね」


差し出された手を握ろうとしたところで、鬼市くんの手がパンッと叩かれて弾けた。


「チームを組んでいるとはいえ個人競技だぞ。よろしくするな馬鹿共が」


恵衣くんが冷めた目で鬼市くんを睨んでいる。