*
「えーっ、亀世パイセンって妹だったの!?」
奉納祭前日は全ての授業が休講になり、代わりに全校生徒で準備を行う。
グランドのテント設営とトラックの石拾いに任命された私たち二、三年生は程よく手を抜きながら拾った石ころをバケツに放り込んでいた。
「何だ知らなかったのか」
「知らなかったって言うか、態度がでかいからてっきり亀世パイセンの方が姉ちゃんなんだと……いででッ!!」
亀世さんに耳を引っ張られた慶賀くんが悲鳴をあげる。
「僕も亀世さんがお姉さんなんだと思ってました」
「お前も引っ張られたいのか来光」
「いやいやいや、しっかりしてるって意味!」
ぎらりと眼鏡を光らせた亀世さんに、来光くんはぶんぶん首を振った。
亀世さんとお兄さんの鶴吉さんは双子の兄妹だ。私は以前教えて貰ったので知っていたけれど、確かに教えてもらわなければ亀世さんがお姉さんだと思うかもしれない。
「たしかに鶴吉さん、亀世さんの言いなりだしな〜」
「バカヤロー、言いなりじゃなくて俺が妹のワガママに付き合ってやってんだよ」
やれやれと肩を竦めた鶴吉さん。
「結局なんだかんだ言って妹って可愛いですもんね」
「確か嘉正んとこの末っ子も女の子だっけ」
「はい。今年で三歳です」
ポッケからスマホを取り出した嘉正くんはとろけそうな顔で写真を見せる。