えー!何だよケチー!と不満の声が上がる中で私は目を見開いて鬼市くんを見つめる。

何年も、前……?

私と鬼市くんが出会ったのは間違いなく神社実習の節分祭が初めてだ。

去年まではこの世界のことや妖の存在すら知らなかったんだから、鬼である鬼市くんと出会っているはずがない。

なのに何年も前って、一体どういうことだろう。

詳しく聞いてみたいけど今私が口を開くともっと悪ノリが加速しそうなので、気になる気持ちをグッとこらえる。


「俺と信乃は話したぞ。だから次、瓏」

「え……俺?」


隅っこでずっと黙って話を聞いていた瓏くんは突然の指名に固まる。


「俺も気になるかも。ミステリアスな瓏がどんな人を好きなのか」

「意外とメンクイだったり?」

「正直にゲロっちまえよ!」


好きな人、と呟きならが真剣に考える素振りを見せた瓏くん。

こんなの真剣に答える必要ないのに……。


「俺の好きな人は……」


皆が身を乗り出した。そして。


「────信乃」


皆は顎が外れたんじゃないかと言うくらい口を開けて固まる。唯一信乃くんが「いやん照れるわ」と反応した。


「鬼市も好き。嘉正も来光も、泰紀も慶賀も恵衣も。巫寿も薫先生も、みんな好き。一緒にいると楽しい」

「あのな瓏、それは友達としての好きや。こいつら完全に誤解してたで」

「誤解? 俺は本当に好きだよ」