「じゃあ巫寿は鬼市のことどう思ってんだよ〜」
からかい口調でそう尋ねられビクリと肩が弾む。
「ど、どうって言われても……私は……」
恥ずかしさのあまりどんど声が萎んでいく。
鬼市くんと出会ったのは今年の二月。まだ半年も経っていないし、なんなら異文化理解学習が始まる前までではたったの二回しか会ってない。
たった一回顔を合わせただけで判断できるほど恋愛に器用な性格ではない。
早く答えてよ、と皆の好奇の眼差しが突き刺さる。
こういう時なんて答えたら……。
「別に今すぐ答えを求めている訳じゃない。ゆっくり俺のことを知ってくれたら嬉しい」
まるで助け舟でも出すかのように鬼市くんがそう言う。そっと顔を上げると目が合って、鬼市くんは頬を緩めた。
甘々じゃねぇか!と泰紀くんのツッコミが入り無事また枕に顔を埋めることになる。
「巫寿が死にそうだから次で最後にして」
次っていうか、もう終わりにして欲しい。
「じゃあさじゃあさ、巫寿ちゃんのこといつ好きになったの? やっぱ節分祭?」
好き云々はさておき、確かにそれは私も少し気になる。恐る恐る顔を上げると鬼市くんがちらりと私を見た。
まるで昔を懐かしむように目を細める。
「もっと何年も前、だな」
「え、二人って顔見知りだったの?」
「質問はさっきので終わり」