「別に隠してるつもりはないけど。聞かれなかっただけだし」
「え、じゃあ聞けば色々答えてくれるの!?」
「ものによる」
もうやめて鬼市くん、と枕に顔を埋める。
「はいはい質問! 巫寿ちゃんの好きなところはー?」
完全に悪ノリに火がついた。
止める人は最初からいないし、唯一悪ノリを止めてくれる嘉正くんが始めたのでもう終わりを待つしかない。
「全部」
ヒューッと誰かが口笛を吹いた。
聞きました嘉正さん全部ですってよ、聞きましたわよ来光さんほの字ですわね、なんてやり取りが聞こえる。
ダメだ、もう枕から顔をあげられない。
「え、じゃあさじゃあさ。巫寿に惚れたからその鬼子ちゃんって子との婚約を解消したってこと?」
「鬼子との婚約がなくなったのは、今年の春に赤狐族から鬼子に婚約の申し入れがあったからだ。まぁいずれは断ってたけど」
つまり別に好きな子がいるから婚約者に不義理したくないってこと?と嘉正くんが追い打ちをかける。
そんなの確かめなくていいよ、といっそう枕に顔をうずめる。
生真面目に「まぁそうなる」と答えた鬼市くんにもう何も言えない。
聞きました嘉正さん巫寿ちゃんのためですって、聞きましたよ来光さんほの字ですわね、とまた二人がふざける。