「ねぇ、巫寿」
突然向かいの嘉正くんから声をかけられて「どうしたの?」と首を傾げた。
「先に謝っとくね。ごめん」
「え? なんの事?」
そう聞き返すも嘉正くんはニコニコしたまま私を見ている。何だか違和感のある笑みで落ち着かない。
そして「はーい、質問」と手を挙げた嘉正くん。みんなが視線を向けた。
「噂でちょこっと耳にして何とな〜く把握してるんだけどさ、もうここまで話題に出たんだから隠さすサクッと白状しなよ鬼市」
嘉正くんが身を乗り出した。
「巫寿のこと好きなの?」
にこにこ、にこにこ。
人当たりのいい笑みで私と鬼市くんの顔を交互に見る。
しばらくの沈黙のあと、驚きで見開かれたみんなの目に好奇心という光が輝き始める。
ボボボッと勢いよく頬が熱くなった私は「も、もう部屋戻るね」と立ち上がろうとしたけれど、隣にいた来光くんが「まぁまぁまぁ」とそれは楽しげな顔で私の手首を掴んだ。
「は!? 鬼市は巫寿が好きなのか!?」
「いやお前気付いてなかったんかい」
「まぁ僕も噂で聞いてたから知ってはいたけど、どのタイミングで茶化そ……真相を確かめるか迷ってたんだよね」
来光くんいま茶化そうって言った。絶対言った。
もうやだ逃げたい。
恋多き親友がそばに居たので昔から恋バナはしょっちゅうしていたけど、話題の中に自分や自分の話が上がることはなかった。
だからこういう時どういう顔でどういう反応をしたらいいのか分からない。
せめて、私のいない所で話して欲しい。