「────だから、別に何もねぇつったろ!!」
春休みにデートしたことを白状させられた泰紀くん。それ以外の進展は本当にないらしくちょっと切れ気味にそう答えた。
「何だよつまんないな」
「泰紀って意外と奥手なんだね」
「つまらへん男やな。サクッと告れや」
「気があるくせにいつまでも相手を待たせるのはよくない」
言われたい放題な状況に「そういうのは彼女できてから言ってもらえます!?」と噛み付く。
信乃くんがカラカラと笑って答えた。
「彼女どころか、俺許嫁おるし」
長い沈黙の後「ハァ!?」とみんなの声が揃う。
い……許嫁? それって婚約者ってことだよね!?
「別にこっちの神修じゃ珍しいことでもないで。わざわざ神修に通うんは妖ん中でも頭領候補だけやし、頭領候補は五歳くらいで婚約者もらうし。言うて口約束やから、破綻になることもしょっちゅうあるけどな。こいつみたいに」
隣の鬼市くんの二の腕を小突く。
余計なこと言わなくていい、と鬼市くんは相変わらずの無表情で答える。
「なに、鬼市も許嫁いたの?」
「せや。こっちにも来とるで、一個下の鬼子いう女子や」
鬼市くんに婚約者がいたのは以前鬼子ちゃんからライバル宣言された時に聞いている。