瞬く間に首から耳まで真っ赤にした泰紀くんが逃げ出そうと腰を浮かした。
それを見逃さなかった来光くん嘉正くんペアが両脇をガッチリ抑え込む。
「そういや最近どうなのさ?」
「連絡取り合ってるの? デートは?」
「ば、ヤメロォお前らッ!!」
バタバタと暴れ出す泰紀くんを布団の上にねじ伏せた二人。
信乃くんは悪い顔でにやりと笑い泰紀くんの顔の前にしゃがみこみ、顎を掴んで上を向かせる。
何だか悪の組織に捕まって取り調べを受けているような光景だ。
「な、何も話すことなんてねぇよ!」
「嘉正、来光。ヤレ」
「はいボス!」
「よしきた」
脇腹を擽られた泰紀くんは思うように身動きができず悲鳴のような笑い声をあげてのたうち回る。
「高二の男女やで、チューくらいしとるんちゃうの?」
「し、してねぇ! そもそも恵理とはまだそんな関係じゃ……ッ!」
恵理ぃ!?と二人の声が揃う。
名前で呼び合う仲には進展していることが、いよいよクラスメイト達にもバレてしまった。
皆は呼び捨てにしたことに反応したみたいだけど、むしろ私は「まだそんな関係じゃ」と言ったことの方が気になる。
春休みにデートしていたことは皆には内緒にすると約束したけれど、おそらくもうそろそろ吐かされるはずだ。
私は恵理ちゃんから詳細な報告を受けているので皆みたいな新鮮な反応はしないけれど、やっぱり恋バナって楽しい。
「おい瓏! シッポでこしょばせ!」
「了解」
「ギャーッ死ぬ、死ぬッ!! だはははは!」
笑い転げる泰紀くんに小さく手を合わせた。