「本庁は12年間も審神者の席が空いていたことに焦っていたってわけ。そもそも先の戦いで子供の数も減ったし、言祝ぎが強い子供もなかなか生まれなくて、一刻も早く次の優秀な候補者決めたかった。そこに巫寿が編入してきた」
薫先生はため息を吐きながらそう言う。
「言祝ぎも強く未婚で先見の明もあって、両親は社出身。あと足りないのは階位が一級以上であること」
あ、と声を漏らす。
薫先生はひとつ頷き、今考えた通りだよと頭をかいた。
審神者になるために私に足りないもの、階位が一級であること。それさえクリアすれば本庁は私を審神者に推薦できる。
「だから昇階位試験で、私を一級にしたんですか?」
「そういうこと。いきなり階位を授与することは流石に出来ないから、昇階位試験を体よく利用したんだろうね」
私に一級が与えられた理由は分かったけれど、それでも私が審神者の候補者に挙げられたのはやっぱりまだ理解できない。
「あの、でもやっぱり分かりません。どうして私なんですか? 歴代の審神者はみんな成人した女性だったと誉さんから聞いたんです。私はまだ学生だし……」
「審神者の候補者を学生の中から選ぶ話は、前からあったらしい。学習能力の高いうちから先代に適切な審神者教育を施してもらって次の審神者に据える、という魂胆だろうな」
審神者教育と表現した恵衣くんの言葉を繰り返し目を瞠った。
「……ほんっと嫌な奴らだよ。今巫寿がやってる誉さまとの授力稽古も、審神者教育の一環なんだろうね」