「薫先生に頼まれて、少し前から本庁の上役会議に参加してたら────」
「え、恵衣くんって本庁の上役会議にも参加できるの?」
思わず遮ってしまいジロリと睨まれる。首をすくめた。
「両親が本庁の上役だし、恵衣自身も本庁に誘われてるからね。ジジイ共は若くて優秀な学生を囲うのが好きだから、勉強だなんだって適当に理由つければいくらでも本庁に出入りできるってわけ」
はぁ、と息が漏れる。
成績優秀な学生は在学中に本庁から入庁の誘いがあると聞いたことがあるけれど、ただの噂だと思っていた。
確かに恵衣くんくらい優秀ならお誘いが来ていてもおかしくない。
「……それで、毎週会議に参加していたら先週の頭にあった会議だけ参加するなと言われた。資料の事前準備だけ手伝った際に、お前のプロフィールが印刷されてあったんだよ」
私の……?
知らないところで知らない人達にプロフィールを回し見されていると思うと少しゾッとする。
「当日食い下がったけどやっぱり中には入れて貰えなかったから、盗聴した」
「盗聴!?」
あの真面目で堅物な恵衣くんが盗聴!?
ちょっと、いやかなり信じがたい……。
私の顔を見た恵衣くんがこれでもかというくらい顔を歪めた。
「仕方ないだろッ! 薫先生にゆすられて仕方なくやったんだよ! 俺だって不本意だ!」
「ひっどいなぁ。俺別にゆすったつもりないよ」
「どの口がッ……!」
「分かった分かった。クレームは後でたんまり聞くから、とにかく最後まで話して。それで?」