確かに妖の世界で危険視されている瓏くんが、なんの制約もなくこちらの神修で過ごせるとは思えない。

本庁の上層部は保守的と聞くし、きっと異文化理解学習が始まる前に一悶着あったはずだ。


「楽しい思い出作れたんならセンセーはそれで十分。沢山遊んで沢山学びな」


薫先生は卓球に興じるみんなの背中に、眩しそうに目を細めた。


「あ、そうだ巫寿。ちょっと話したことがあるんだけど」

「は? 教え子に何するつもりですか」


私よりも先に鬼市くんが答えた。ぎゅっと眉間に皺を寄せた顔で立ち上がる。

するとブハッと薫先生が吹き出す。


「あはは、そう威嚇しないでよ。別に密室に二人きりって訳でもないし、第一俺のタイプはボンキュッボンな美人系だから」


薫先生と鬼市くんが振り向いて私を見た。二人に頭のてっぺんからつま先までじーっと見られて、鬼市くんはホッと息を吐きベンチに座り直す。「うん、やっぱ違う」と薫先生は朗らかに笑った。

なんだか今ものすごく侮辱されているような気がするのは気のせいだろうか。


「行くよ巫寿」


まだ若干腑に落ちないけれど、その背中を追いかけた。