「いい? これは主に広葉樹林とか雑木林に生息する(ぬえ)って呼ばれる妖だよ。生態学では習ったことあるけど、生で見るのは初めてでしょ? もっと近くで観察しな〜」


鵺の前足を招き猫のように操って手招きする姿に何だかもう何も言えない。

深夜の雑木林しかも残穢が溢れかえるような場所で、いつも通りの授業を始めた薫先生。

本当に……もう何も言えない。


「鵺は特徴的な体で、頭が猿、胴が狸、手足が虎で尻尾は蛇なんだけど────ってみんな聞いてる?」

「こんな状況で聞けるかいなッ!」


信乃くんの鋭いツッコミが炸裂した。

さすが関西人だ。


「帰ったら鵺についてノートに纏めて提出してもらうから、ちゃんと聞いときなよ?」

「無茶苦茶だ! 横暴だッ!」

「あ、慶賀。そっち気を付けて」


うわぁッ!と慶賀くんの悲鳴が上がる。


私たち、生きて寮に帰ることが出来るんだろうか。


カラカラ笑う薫先生の横顔にちょっと泣きたくなった。