「やっぱり実践に勝るものはないと思うんだ。だから君らも行こうか、任務」
ヒッと誰かが息を飲む声が合図だった。逃げろッ!と慶賀くんが叫び、皆は四方に散らばって走り出す。
「信乃鬼市瓏お前らも逃げろ! 睡眠時間がなくなるぞ!」
来光くんがそう叫ぶも、訳が分からずその場に佇んでいた三人は薫先生にがっしりと肩を組まれる。
心の中で3人を拝む。
ごめん皆、先に逃げた私たちを許して。
「あはは。逃げても意味ないのは、去年のゴールデンウィークの課外授業で散々思い知ったでしょ? ほんと君たち学習しないねぇ」
背中でポンッと空気が弾ける音が聞こえた。薫先生が使役している妖狐を出した音だ。
そーれ捕まえろ、と楽しげな声が聞こえて前足が土を踏む音がすぐそばまで迫ってくる。
振り返るのが恐ろしくて全力で前だけを向いて走り続ける。
「そうだ、恵衣も連れてきてね。学生には皆平等に学習の機会を与えなきゃ」
んなの望んでねぇよッ!と誰かのツッコミが遠くで聞こえる。突っ込む声はすぐに悲鳴に変わった。