「仕事じゃ仕方ないですね。頑張ってください」
ありがとう嘉正、と肩をすくめた薫先生。
すぐに出なきゃいけない、と言っていたので言葉通りすぐに出発するのかと思いきや、薫先生は「ふむ」と顎に手を当てて私たちの顔を見回す。
うん?と皆が首を捻った。
「形代操術の自主練もいいと思うけど、他の種目も自主練した方がいいんじゃない? 例えば模擬修祓とか」
模擬修祓といえば、全学年で行われる実践を模した修祓の総当たり戦だ。
確かに私たちは一番得点の高い形代レースのことばかり考えていたけれど、そろそろ他の種目も練習するべきかもしれない。
「それでセンセーいいこと思いついたんだけどさ」
薫先生がニコニコと笑いながら一歩前に出た。何故か不穏な気配を感じて一歩あとずさる。皆もそれを感じとったらしくゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
おいおいおい、と泰紀くんが怯えたように顔を引き攣らせる。
何故か激しい既視感を感じた。
「お、俺薫先生が何考えてるか分かったかも」
「僕もだよ慶賀。なんならもう足が震えてきた」
「し、しっかりしろ来光! そんな足じゃ逃げれねぇぞ!」
「嫌です勘弁してください薫先生」
ジリジリと薫先生が距離を詰めてくる。