「たださっきも言った通り、私は眞奉しか使役できなかったからほかの十二神使については分からないわ。審神者を引き継いだ時先代の審神者に何度かお会いしたけれど、彼女が使役する十二神使にそんな容姿の子はいなかったはずよ」

「そう、ですか……」


もしかしたら彼のことが分かるかもしれないと思ったのだけれど、誉さんも彼のことは知らないらしい。

だとしたら、やっぱりあの妖は十二神使じゃなかったのだろうか?


「ああ、そうだ。参考になるかは分からないけれど、十二神使にはそれぞれの色があるの」


色?と聞き返す。


「ええ。そうね……例えば騰蛇。彼女は火を司るから、赤が彼女の色なのよ」


後ろで控える眞奉を見た。燃えるように赤い瞳で私をじっと見ている。


「他にも……海を司る天后(てんこう)は青だし、黄砂を司る天空(てんくう)は黄色、勾陳(こうちん)は金で六合(りくごう)は桃色だったかしら」


青、黄、金、桃。鮮やかな色が目に浮かぶ。


「巫寿さんの話を聞く限り、その妖は白のイメージが強いわね。となると────」


いつの間にか息を止めていた。唾を飲み込み食い入るように誉さんを見つめる。



「白は、白虎(びゃっこ)ね。西を司る十二神使よ」


西を司る十二神使。白い妖────白虎。

初めて聞いたはずなのに、耳馴染みのいい音だった。思わず声に出したくなるように愛おしくて優しい音。