そんな声が聞こえてハッと振り返った。稽古場の入口に目を見張る誉さんが立っている。

まるで歩き方を忘れたようによろよろと歩いてくる。

人の気配を感じたらいつもはすぐに姿を消すはずの眞奉が、今日はその場から動かずじっと座っている。

崩れるように眞奉の前に座った。


「間違いない、あなたは騰蛇ね。ああ……なんて懐かしい顔なんでしょう」


誉さんは震える手を眞奉の手に重ねる。


「誉さん……? 彼女のことをご存知なんですか?」

「もちろんよ。騰蛇は私が唯一使役していた十二神使ですもの」


誉さんが使役していた十二神使……!

驚きの事実に眞奉を見上げる。


「教えてくれても良かったのに」

「聞かれませんでしたので」


いつも通り憮然とした態度で答える。

誉さんは嬉しそうに「相変わらずね」とカラカラと笑った。


「それで……どうして騰蛇がここに? まさか」


ひとつ頷いた。


「神修へ入る前に禄輪さんから譲り受けたんです。だから今は私の元に」


さっきよりももっと驚いた顔をした誉さんが、私と眞奉を見比べる。