「取り込んだ穢れが言祝ぎの総量よりも下回っていれば問題ない。しかしもし穢れの方が上回っていれば……」


言霊の力は体力と同じだと前に嘉正(かしょう)くんが言っていた。使えばなくなるし休めば回復する。

つまり穢れを相殺するたびに言祝ぎは減っていく。言祝ぎが尽きて、それでも穢れの浄化が間に合っていなければその先にあるのは。

そこでやっと分かった。自分が無知だったとはいえどれだけ馬鹿で無謀なことをしていたのかを。

私は人よりも言祝ぎが多いらしい。でももしそうじゃなかったら、私は今頃。


「……これ以上は私から言うまでもないな」


禄輪さんが静かにそう言った。

小さく頷く。

嫌というほどよく分かった。


「本題に戻るぞ。それで、この祝詞を奏上した事と大量の空亡の残穢に当たったことで、おそらく巫寿の中の言祝ぎが著しく減少したんだろう。十二神使の原動力は結びを交わした主の言祝ぎだ。十分な言祝ぎを確保できないことと、十二神使の特性である穢れを嫌う性質から、騰蛇は一時的に巫寿から離れているんだと思う」


最近見かけないな、なんて呑気に考えていた少し前の自分が情けない。眞奉がそばにいられなくなったのは、全部私のせいじゃないか。

それなのに私は自分の事ばかりで、禄輪さんから言われるまで気付きもしなかった。

ひとつの事に集中すると途端に視野が狭くなるのは昔から悪い癖だった。