「そもそも瓏は奉納祭に出れんのちゃうか? だって土曜日やろ。あいつ仕事あるし」

「えっ、流石に学校行事だし許してもらえるだろ!?」

「土日に仕事受けることが神修に通わせてもらう条件やからな。頭領にそれ提案したの俺やし、こればっかりは俺の力じゃどうにもなぁ」


ため息をついた信乃くんに、皆は納得のいかない顔でうーんと唸り声を上げた。


瓏くんは信田妻一族に保護された時から、少し微妙な立場にいるらしい。

本来千歳狐というのはその強い力で他の妖狐たちを守り、妖狐たちのもまた千歳狐を力の象徴のように受け入れ畏怖し崇め奉る存在なのだとか。

しかし瓏くんは両親を失ったことで力の制御を学べず今の彼は封じの呪いがなければ同族すらも無差別に傷付けてしまう。現に彼が保護された六年前、助け出そうとした信田妻の救出部隊を半壊状態にさせたらしい。

そんな事件があったせいでほとんどの妖狐が瓏くんをよく思っておらず、今の神修と同じような状況が長らく続いていたんだとか。

誰とも喋らず笑わず、唯一任されるようになった村の外での修祓の任務だけを淡々とこなす日々。

その状況を変えたのが次期頭領の信乃くんだ。