「瓏が引っ掻いたのが呪の一文字分やったからあいつも自我が保てたけど、五つ消しとったら一時間後にはこの学校なくなっとったぞ」
ひぇ、と皆が顔を強ばらせる。
以前禄輪さんがしてくれた説明を思い出した。
瓏くんは身体中に刺青のようなものが入っている。鎖が体に巻き付くように書かれたそれは刺青ではなく歴とした呪いだ。
ただ誰かから呪われているという訳ではなく、まだ自分では制御が出来ない瓏くんの莫大の妖力を抑えるためのもの。文字が体に描かれているうちは意識せずとも力を抑え込めるけれど、その文字が一文字でも崩れれば呪いの効果は薄まってしまうらしい。
つまり瓏くんは力の制御が出来なくなるということだ。
「アイツ友達に頼まれたらやると思うから、絶対無茶なことは頼むなよ」
信乃くんはずずっとお茶を啜る。
「てかそんなに危険なら友達に頼まれたとしても絶対やっちゃダメだろ!」
「そう思うよな? でもアイツお友達大好き人間で友達のことになるとちょっとネジ外れるから危険なんや」
「あの瓏が? ちょっと想像できないんだけど」
確かに、言い方が少し悪いけれどあの無口で何を考えているか分からない瓏くんが友達大好き人間だとはにわかに信じ難い。
「まぁそのうち分かるわ」
ふふ、と笑った信乃くん。
皆はふーん、と腑に落ちない顔をした。