瓏くんの噂話で持ち切りになったことによって、私への陰口はパッタリとなりを潜めた。
陰口を言われるのは辛いけれど、私の代わりに瓏くんが注目の的になってしまったみたいで心苦しい。
けれど瓏くんはそんな私の心境に気付いたのかたまたまなのか、偶然教室で二人きりになったタイミングで「巫寿ちゃんは気にしなくていいよ」と一言だけ言った。
謝るのも感謝するのもおかしな気がしてひとつ頷けば、少しだけ頬を緩めて頷いていた。
いただきまーす、とみんなで手を合わせて箸を取る。今日の晩御飯はさば味噌だ。
「なぁ俺思ったんだけどさ、奉納祭の日に瓏に千歳狐完全解放状態で出てもらえば俺ら圧勝なんじゃね!?」
いいこと閃いた、とばかりに目を輝かせる慶賀くんに皆は呆れた目を向けてご飯を食べ進める。
「なんで無視すんだよ! 名案だろ!」
「バーカ。信乃の話聞いてなかったのか? 瓏が力を全開放したら一時間で国ひとつ滅ぼせるんだぞ。それに本人もまだ制御が上手くできねぇって言ってたろ」
ゴン、と脳天に拳を落とされた慶賀くん。てっぺんを押えながら「そうなのか?」と目を丸くさせる。
本当に話を聞いていなかったようだ。
「じゃあこの間力解放してたのは良かったのか?」
「いい訳あるかいな」
綺麗な所作で鯖をほぐす信乃くんがそう口を挟んだ。