「なあ鬼市〜、人型のコツとかねぇの?」
「そうだな……こう、グイッとググッと」
「あー、アカンアカン。コイツ感覚派やから聞いても参考にならんで」
「ほー、なるほどな! グイッとググッとか!」
「いやなんで分かるん」
「慶賀も感覚派だからね」
みんなのやり取りを後ろで聞きながらくすくすと笑う。
最終下校時間になり自主練を切り上げた私達は、そのまま夕飯を食べるため広間へ向かって歩いていた。
お腹すいたねー、なんて話している他学年の学生たちが私たちの集団を見かけるなり怯えたようにパタパタと去っていく。
嫌な感じだな、と思いつつももう言ってもキリがないので最近は私も皆も無視するようになった。
広間の前についた。
中に入る前に瓏くんは足を止める。
「……信乃、よろしくね」
「おう、後で持ってくわな」
こくりと頷いた瓏くんに皆は「また後でなー」と声をかけながら広間の中へ入った。
閉鎖的な神修では噂話は瞬く間に広がる。瓏くんが千歳狐だという話は、開門祭最終日の夜にはほとんどの学生が耳にしていた。
それからというもの、共有スペースで瓏くんを見かける度に学生たちは蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出す。
千歳狐が人の臓物を食べる、という言い伝えをみんな知っているからだろう。
それに気がついた瓏くんは広間で一緒にご飯を食べないようになった。他の学生や私たちに気を使っているんだと思う。
だから毎食信乃くんがお膳を部屋に運んでいる。