「薫先生、何でこんなに気持ち悪くなるんですか……」


むかむかする胃を押えながら質問する。

薫先生は「いい質問」と機嫌よく指を鳴らした。


「そもそも形代って言うのは、自分の分身だって初回の授業で話したでしょ?」


こくりと頷き、バッと口元を抑える。

あ、だめだ。頭を動かすとまた吐きそう。


「動物形は飛ばす走らす泳がす程度のことしか出来ないけど、人型だともっと人間らしい複雑なことが出来るようになるわけ。つまり本体である自分がいて、分身である形代も動かさないといけないのね」

「つまり、同時に自分を二体動かしてる的な……?」


う、と嘔吐きながら嘉正くんがまとめる。


「その通り。人の動きって思ったよりも複雑な動作の連続なんだよ。そんなのを二倍の量こなしてちゃ、頭もオーバーヒート起こすよね。あはは」


なるほど、頭がオーバーヒート……。

だからこんなに気持ち悪くなるんだ。


「鞍馬勢は優秀だねぇ」


人型の形代で組体操をして遊んでいる鬼市くん達に感心したようにそう言った。


「妖力はイメージ通りに動かす力やからな。形代を動かす感覚はそれとよう似てるから、初等部で習うんや」

「こんなことおろろろ、初等部ですんのかよおぇぇぇぇ」

「喋るか吐くかどっちかにし」