「いや……言い方悪いけどこいつ千歳狐やぞ」

「知ってるぞ? だからこうして色々質問してるんだろ?」

「お前ら千歳狐についてなんにも知らんのか?」


信乃くんはむしろ私達のことを心配しているような顔でそう尋ねた。

千歳狐については私も授業で習った程度しか知識がない。千年に一度九尾の狐から生まれる強い妖狐、莫大な力を保持していること。


「あ、もしかしてアレを気にしてるの? 千歳狐は人間の臓物を食うとかいう伝承」


ポンと手を打った来光くんに、二人はすぐさま渋い顔になる。

どうやら間違ってはいないらしい。


「でもさ、普通に考えてそんなの食べないでしょ? じゃなきゃ神修の先生たち、瓏が異文化交流会に来るの死ぬ気でめると思うよ」

「だよな〜。そもそも人間の臓物より普通に美味いもん溢れてるし」

「ケンタのチキンとかな!」


それそれ〜、と三人が笑う。神社実習の際にみんなで食べたジャンクフードの写真を見せては「これ食ったことある?」と瓏くんに尋ねる。

毒気を抜かれたような顔で信乃くんが私たちの顔を見回した。


「で? 瓏ってどんだけ強いん!?」

「尻尾は邪魔じゃないのか!?」

「今何歳なの? 気狐ってことは少なくとも百は超えてるよね! 何時代の生まれ!?」


興奮気味に尋ねる三人。瓏くんは少し戸惑いながらも一つ一つ丁寧に答えていく。

嘉正くんが笑いながら信乃くんの肩を叩いた。