「で!? 俺ら超ビックリしたんだけど!」


早朝の湿っぽい教室に声が響く。揃って早めに登校した私達は教室に着くなり瓏くんを囲った。

瞳をきらきらさせながら身を乗り出した慶賀くんに、ちょっと身体を反らした瓏くんは「ごめん」と端的に謝る。相変わらずリアクションが薄い。


「ごめん瓏。お前のこと、こいつらにはほぼ話した」

「ん、いい。隠すことでもないし」


結構重大なことだと思うんだけれど、そんなにあっさり許すんだ……。まぁ信乃くんのことを信頼しているのは普段の様子から見ていて分かってはいたけれど。


「鬼市くんも知ってたの?」


隣の鬼市くんにそう訪ねると、「ああ」とこれまたあっさり認める。


「瓏が入学してちょっと経った頃に聞いた。編入してきたばっかの頃はかなり危うくて、しょっちゅう暴走してたから。流石に変だと思うだろ」


確かに何度も昨日みたいな場面を見ていたら、私でもクラスメイトがただ者じゃないことに気付くだろう。


「でもホントびっくり。千歳狐って授業では伝承に触れる程度しか習わないし、伝説上の妖なんだと思ってた」

「なぁ尻尾って9本もあって邪魔にならねぇの?」

「めちゃくちゃ強いって聞くけど、具体的にどのくらい強いんだ?」


興味津々に質問する皆に、瓏くんと信乃くんはお互いに顔を見合せて目を瞬かせる。

そんなふたりの態度に「どうかしたのか?」と泰紀くんが首を傾げた。