禄輪さんの言う通り、瓏くんは次の日の朝何事も無かったかのように広間に現れた。
現れたと同時に広間の喧騒は一瞬で静まる。皆が入口に視線を注ぎ、恐れおののくように身を縮めた。
「瓏! こっち!」
慶賀くんが立ち上がって手を振った。
瓏くんがひとつ頷き真っ直ぐこちらに向かって歩いてくる。賑わう広間がモーセの伝説のごとく海が割れるように瓏くんの進む道をあけた。
そんな様子を気にすることなくいつも通りの顔で信乃くんの隣に腰を下ろした。
「目覚めたんだな! 体の具合どうだ?」
「ん……平気」
「そかそか! 飯は? もう食った?」
「医務室で、お粥もらった」
「あー、陶護先生の手作りお粥な! 俺らも一年の時散々食ったけど、マージで食えたもんじゃねぇよなぁ」
あっはっは、とみんなが笑う。
笑い声が止むと急に静まり返った。周りの学生たちが明らかに聞き耳を立てている。
「皆もうメシ食うたな? なら一旦外出よか」
皆はコクコクと頷きお膳を持って立ち上がった。