皆も険しい顔で視線を向けた。
信乃くんの言葉わふと思い出す。
"河童のガキが焦って川の水を操ってぶっかけたせいで────"
信乃くんが助け出したのは赤狐の子供、泰紀くんが抱きかかえているあの子一人だけだ。つまりあの奥にはまだ。
目を瞠って立ち上がる。
「駄目だ巫寿、中には入れない」
私の手首を掴んだのは鬼市くんだった。
「あの辺一帯は高温になってる、近付いた瞬間死ぬぞ」
鎮守の森を突っ切っている時に感じた熱気はそういう事だったんだ。
何も出来ない自分へのもどかしさに唇を噛み締める。
「それに靄の奥から妖力を感じる。驚いた拍子に制御を失って、子供の妖力が暴走してる可能性もある。そうなると高位の神職しか止められない。あの騒ぎで神職もこっちに向かってきてるはずだ。それを待とう」
「でも中に子供がいんだろ!? 間に合わねぇよ!」
「鬼市の言う通りだ。それで助けに入って慶賀が倒れたら意味ないだろ」
鬼市くんの言い分も慶賀くんの言い分もわかる。
今行けばミイラ取りがミイラになるだけだ。でもここで待っていれば中にいる子供は助からない。
だったら一体どうすれば。