「まず天地一切清浄祓についてだが……これに関しては巫寿から尋ねられた時にもっと詳しく聞き出さなかった私も悪い」
ふぅ、と息を吐いた禄輪さんが顔を上げる。
「対象を絞って浄化したり一部だけを祓う他の祓詞と違って、この祝詞は名前の通り天も地もその場に存在するもの一切を清め浄化する最強の祝詞だ。前にも言ったが扱える人はまずいない。私が生きてきた中でこれが使えたのはたったの二人だけだ」
それは前にも聞いたことがある。
これを使えたひとりは神修の学生だった人で、もう一人が先代の審神者志ようさんだ。
教本に載っているような祝詞でもなく、言祝ぎの総量が桁違いに多い人しか扱うことは出来ないらしい。
「扱える人物が少ないのは、それだけ高度な祝詞で扱いが難しく危険を伴うということだ」
「危険、なんですか?」
「この祝詞は────己の言祝ぎと相殺させあうことで浄化する祝詞だ」
言祝ぎと相殺。
不穏な言葉の羅列に息を飲んだ。
「言霊で浄化の力を生む祓詞と違って、言祝ぎそのものに浄化の要素が備わっているから力同士を直接ぶつけて祓うことができる」
どんな物でも一度何かを介してしまえば威力は落ちるもの。
そうか、だから直接ぶつけることで一層強い効果が生じるわけだ。