赤い毛に獣耳を生やした六歳くらいの子供だ、おそらく赤狐だろう。
「……ッ、水蒸気爆発や」
信乃くんが呻きながらそう言った。
「その赤狐のガキンチョが、花火の火種に怪し火をつかったせいでそこそこデカいボヤになったんやッ……」
花火に怪し火?
火という文字が入ってはいるけれど怪し火はただの火ではなく妖が生み出す残穢の一つだ。威力は普通の火よりも圧倒的に強いし、自我は無いけれど自ら動く程度のことならできる。
怪し火を花火の火種になんか使ったら……。
小学五年生の時に学校行事で行ったキャンプファイヤーの火柱を思い出す。
「ボヤまでなら何とか消せたのに、河童のガキが焦って川の水を操ってぶっかけたせいで大爆発や……」
ふぅ、と信乃くんが息を吐いて脱力する。鬼市くんが険しい顔をしながら制服をぬがせた。
「信乃が直前に匂いで気が付いたおかげで俺らは反橋の裏まで逃げれたけど、子供らを助けに行った信乃が爆発に巻き込まれた」
あの爆発に巻き込まれたなんて。
四肢が引っ付いとるだけマシやろ、と力なく笑った信乃くん。
それよりも、と険しい顔で靄の奥を睨む。