「禄輪さんは悪くありません。私が"来ないで"って言わなかったのが悪いんです」
「なんで俺はダメで禄輪さんはいいんだよ! 妹の勇姿をビデオにおさめて見届けるのは兄としての義務だろ!」
「そういう所が嫌なの! 来るなら隅で大人しくしててよ!」
「できませーん! 玉嘉さんにだって頼まれてるんだし、何より兄ちゃんは巫寿の可愛い姿を死んでも残して起きたいんだよ!」
ここで玉じいを出すなんてずるい。何も言い返せなくなるじゃないか。
ほらほら巫寿笑って〜、と私にカメラを向けて手を振るお兄ちゃん。
呆れた顔をした禄輪さんがお兄ちゃんの頭に手刀を落とした。
「お? なんか賑やかだな!」
「お邪魔するよ、巫寿ちゃん」
控え室の扉から顔を覗かせたのは制服に着替えた聖仁さんと瑞祥さんの二人だった。
「聖仁さん、瑞祥さん。騒がしくてすみません、家族が来てて」
じろりとお兄ちゃんを睨むと、お兄ちゃんはよそ行きの顔で「妹がいつもお世話になってます」なんて畏まった挨拶をする。
今更ちゃんとしたって、お兄ちゃんが重度のシスコンということはみんなにバレているから意味ないのに。
「禄輪禰宜もいらっしゃってたんですか……!」
お兄ちゃんの後ろに立つ禄輪さんを見付けて、聖仁さんが興奮気味に駆け寄る。
「やぁ聖仁。また舞の腕を上げたな」
「光栄です……!」
「禄輪禰宜! 私は私は!?」
「うん、瑞祥も一段と上手くなってて驚いたぞ」
禄輪さんに褒められたことがよっぽど嬉しかったのか二人は顔を蕩けさせる。