「────ね、来たよ」
「聞いてきてよ!」
「俺はやだよ、お前が行けって」
翌日、神話舞も誉さんとの稽古もちょうど休みが重なって久しぶりに神楽部の稽古に参加した。
稽古場に入るなり、部員たちが私の方を見てひそひそと話し始める。
前と同じだ。相変わらず雰囲気は悪い。深く息を吐いて一歩踏み出す。
「ねぇ巫寿さん」
中等部の男の子に声をかけられた。振り向くと感じの悪い笑みを浮かべて私を見ている。
「今日は神話舞の稽古ないんですか? もしかして役から降ろされたとか?」
ふふ、と嘲笑う声が周りから聞こえた。
まねきの社に投書したのは、神楽部の人達だだったんだ。
大丈夫、怖くない。辛くない。昨日を思い出そう。雨の中差し出されたあの傘を思い出せばこんなのどうってことない。
「今日は稽古が休みなだけだよ」
私の反応が気に食わなかったのかその子は「ふーん」とだけ答えて友達の元に戻っていく。
小さく息を吐いた。
「なんだよ、降ろされてないじゃん」
「でもまねきの社のポストにはちゃんと投書したし」
「そのうち降ろされるんじゃない?」
「だよな。ズルしてるんだし」
潜めることさえされなくなったひそひそ話。
聞こえないふりをしてストレッチを始める。
"胸張ってろ"
その言葉を思い出す。
大丈夫、こんなことで私が傷付かなくていい。