どうして来てくれたの? どうしてここが分かったの?
なんで、無視せず一緒にいてくれるの。
「お前さ、もうちょっと場所考えろよ。寒い」
「ごめ……」
いい切る前に頭からばさりと布をかけられた。
松葉色の硬い布地が頬にあたり、柔軟剤の優しい匂いがふわりと香る。
これ、恵衣くんの制服……?
「ガタガタ震えてる奴見てる方が寒い」
ぶっきらぼうな物言いなのに、冷えた心にじわりと沁みる。
頭にかけられたブレザーを握りしめたその瞬間、ボタボタと大粒の涙が溢れた。嗚咽が漏れそうになって必死に膝に顔を押し付ける。
強まる雨の音と松葉色のブレザーが、それを隠してくれているみたいだった。