「あの、それで……」
恐る恐るそう尋ねると、喧鵲禰宜は「ああ、うん」と少し言いづらそうに言葉を濁す。
ふう、と一つ息を吐いた禰宜は先程お茶を持って来た巫女助勤が一緒に持ってきたクリアファイルを手に取ると、中から茶封筒を引き抜いて私の前に滑らした。
「まねきの社の、社務所の郵便受けに投函されていたものだ」
「私が見てもいいんですか……?」
禰宜が険しい顔で頷く。
茶封筒を手に取った。宛名も送り主の名前もない。封はすでに切られている。社務所宛に届いたものだから、すでに神職さまが中身を確認したんだろう。
封筒の中には三つ折された白い紙が一枚入っていた。紙を広げて中身を検める。
乱雑な文字で書かれたその内容に目を見張った。
"椎名巫寿は不正している。
神話舞に相応しくない。
すぐに役から降ろすべきだ。
有志一同"
たった三行、でも悪意を感じるには十分すぎる内容だった。
紙を持つ手が震える。心が凍り付いていくのが分かった。心臓が耳の横にあるみたいにばくばく煩くて、息の仕方を忘れたみたいに胸が苦しくなる。
「数日前から似た内容の手紙が何通か投函されている」
何通か、と言い濁したのは恐らく禰宜の優しさなんだろう。