結局時間が押していたこともあり挨拶は代表して聖仁さんだけが行うことになった。
一限目が始まる予鈴がなったことでバタバタと朝拝は終了する。
ゾロゾロと皆が出口へ進む中で、嘉正くんたちが流れに逆らって舞台まで進んでくるのが見えた。
「巫寿!」
一番に駆け付けたのは鬼市くんだった。
「大丈夫か、どこも怪我してないか?」
険しい顔で詰め寄る鬼市くんに「大丈夫だよ」と苦笑いを浮べる。心配してくれるのは有難いけど転んだだけだしちょっと大袈裟だ。
その時、「おらっ、自分で歩け!」と怒ったような声と共に、出口へ向かう生徒らの隙間から皆が現れた。
泰紀くんと慶賀くんが誰かの腕を引っ張るように掴んで出てくる。二人に挟まれて連れてこられたのは先程私に足をひっかけた中等部の男の子だった。
二人の手から逃げようと暴れる彼と目が合った。一瞬とても気まずそうな顔をした彼は、思い出したようにキッと私を睨んでもっと激しく暴れ出す。
「この野郎ッ、さっさと巫寿に謝れ!」
「中坊にもなってやっていい事と悪いことの区別もできねぇのか!?」
「うるさい! 慶賀くん達にはカンケーねぇだろ!」
泰紀くんがゴンッと彼の脳天に拳骨を落とした。
呻き声を上げた男の子は酷く顔を顰めると二人の腕を振り切って逃げ出した。