「彼女欲しい」と切実な思いを叫んだだけなのに、結局慶賀くんは朝拝が終わるまでの間後ろで立たされるらしい。巫女頭に睨まれながら直立不動を強いられている姿にみんなでクスクスと笑う。

可哀想だけど罰則にならなかっただけマシだろう。

祓詞の奏上から始まり、いつもと代わり映えしない朝拝が着々と進んでいく。


「次に、今年の神話舞に参加する学生を紹介します。名前を呼ばれた学生は前に来るように」


禰宜のそんな言葉にハッとする。

そういえば去年もこの時期に神話舞に参加する学生として朝拝で紹介された。

訳が分からないまま舞台に上がってそれでは意気込みをのどうぞと言われ頭が真っ白になって訳が分からないことを言った気がする。

すっかり忘れていた。今年もまたおかしな事を言うことになるかもしれない。


「まず楽人(がくじん)の部からは高等部三年生の────」


早速紹介が始まった。

私や聖仁さん達みたいに舞を奉納する舞手(まいて)の部と同様に、雅楽器を用いて神話舞の音楽を奉納する楽人の部もたまに学生の中から選ばれることがあると前に教えてもらった。

舞よりも雅楽器を先行する人が多い分、学生から選ばれるのことは滅多にないらしい。

去年はいなかったようだけれど、今年は何人か選ばれたようだ。