「先見の明は他の授力とは違って、発動条件があるの。それは先見の明の本質が"危機回避"だから」
「危機、回避……」
「そう。先見の明の発動条件は"誰かに危機が迫っている時"」
思い返せば見た未来は誰かが怪我をしたり苦しんだりする姿で、どれも目を背けたくなるような光景ばかりだった。
「先見の明は迫り来る危機を事前に見ることで、それを回避する力なのよ」
そう、だったんだ。
だから私は何度も何度も、皆が危険に晒される瞬間の未来を見たんだ。
そこでふと気が付く。
「あれ……でも発動条件が"誰かに危機が迫っている時"なんだとしたら」
「そう、その通りよ。先見の明が他の授力とは大きく違うのはそこなの」
誉さんは苦い顔で頷く。
鼓舞の明を使うには決められたステップを踏む必要があり、書宿の明は文字を書くことで力が宿る。どの授力も呪力保有者が何かしら働きかけることで力を生み出す。
でも先見の明の発動条件は"危機が迫った時"。
つまり私自身の力だけじゃ、どう足掻いても先見の明を使うことは出来ないということだ。