誉さんにこれまでの事を尋ねられた。これまで私がどんな時に先見の明を発動したか、ということだ。
思い当たる一度目は一学期の開門祭だった。確か神話舞の一回目の舞台が終わって、疲れて控え室で居眠りをしていた時に、クラスメイトのみんなが危険に晒されるのを見た。
そこからも何度か無意識に使ったことはあったけれど、どんな時と聞かれると場面は様々だ。
最初は眠っている時に見たし、最近は立っている時に脳裏をよぎるように見る時もある。
ふむふむと頷いた誉さん。
「そもそも巫寿ちゃんは、先見の明はなんだと思う?」
先見の明が何か?
先見の明は授力のひとつで、未来を見通す力ではないんだろうか。
私がそう答えると誉さんは小さく首を振る。
「簡単に言えば未来を見通す力であっているけれど、本質は違うのよ。よく思い出して。先見の明がどんな時に発動したか」
どんな時に発動したか……。
目を閉じてもう一度去年のことを思い出した。
開門祭で空亡の残穢が封印された場所へ行って戦った時、学校で蠱毒に襲われそうになった時、山で遭難したおじいちゃん達が土砂崩れに巻き込まれそうになった時。
あ、と小さく呟く。
「どれも誰かが危険に晒されていた時────ですか?」
その通りよ、誉さんは深く頷いた。