「でもそれって一年生は不利なんじゃない? 知らない祝詞もあるだろうし」
「この競技は正確性が一番重要視されるんだよ。だからただ難しい祝詞を奏上して強い呪いを祓ったところで加点にはならないし、習ったことさえちゃんと出来ていれば一年でも優勝できるんだぜ」
なるほど、よく考えられた競技だ。それなら学年が違っても不平等にはならない。
ちなみに去年の優勝は聖仁さんで、二位が恵くん衣だったらしい。納得だ。
「今年こそは根こそぎ一位かっさらって、絶対優勝するぞ! お前ら、寝る間も惜しんで練習だ!」
「おおー!」
盛り上がる男子勢にやや置いてけぼりになる。
そんなに奉納祭にかけてるんだ……。
「盛り上がってるなぁ。まぁ優勝したら金一封あるしね」
暖かい目で見守る聖仁さんに「金一封ですか?」と聞き返す。
「そ、金一封。優勝したクラスには色んな特典があるんだよ。例えば夕飯の献立をなんでもリクエストしていい権利とか、朝拝一週間免除とか」
それを聞いて納得だ。だからあんなに必死なんだ。確かにどれも魅力的な特典だもんね。
それから過去の奉納祭の話になって、慶賀くんが熱中しすぎて袴のおしりが裂けているのに最後まで気が付かなかった話が始まる。
就寝時間になるまで、みんなでゲラゲラ笑い転げた。