寮へ戻るとまだ夕飯時には少し早かった。時間まで広間で待ってようか、と聖仁さんに提案されて中へはいると賑やかな笑い声が聞こえた。
「何か楽しそうな声がするね」
「初等部の子達か〜?」
顔をのぞかせると広間の真ん中辺りで、初等部の子供たちのジャングルジム代わりになっている信乃くんの姿があった。
傍には嘉正くん達もいる。
「おいお前ら、よじ登るないうとるやろ〜。俺お前らと遊ぶために来たんとちゃうで」
「いやだー!」
「あそぶの!」
子供たちが次々と信乃くんの体をよじ登る。からからと笑った信乃くんは仕方なく子供たちの相手をしていた。
「お、信田妻一族の次期頭領だ。さすが面倒みいいね」
「妖狐の一族は子供が多いっていうもんな」
へぇ、と目を丸くする。
信乃くんって次期頭領だったんだ。確かに自己紹介の時から兄貴肌のような雰囲気はあったし、頼りになるお兄ちゃんっぽい。
次期頭領と言われても納得だ。
「なぁ信乃、お前はこん中だったらどれが一番好き〜?」
「俺は一番右だな」
「僕は断然左」
子供たちが戯れている隣で、テーブルに何かを広げて頭を突合せていた慶賀くんたちがそう話す。
何の話だろう?