「巫寿が最後まで人の話を聞かないから悪いんだぞ」

「兄ちゃんもう反対はしてないよ。巫寿が選んだ道なんだからもちろん尊重する。ただね、禄輪さんと話して、本当にこのまま神修に通いたいのかこのタイミングで確かめておきたかったんだ」


お兄ちゃんが眉を下げて笑う。その表情をされるといつも何だかむず痒い。


「巫寿自信でそう決めたなら、もう私たちから言うことはないよ」

「でも兄ちゃんが恋しくなったら直ぐ辞めて帰ってくるんだぞ!」


二人からぽんと肩を叩かれた。途端胸が熱くなって、鼻の奥がツンとする。

何とか「はい」と返事をすると、お兄ちゃんが瞳をうるうるさせながらガバッと両腕を広げた。「巫寿〜ッ!」と私の名前を叫び、そのまま抱きつこうと走ってきたのでサッと身を翻して避ける。背後で盛大に転ぶ音が聞こえた。


「まぁあれだ。そうは言いつつ巫寿は一恍(いっこう)に似て真面目で勤勉だから、勉強面では私が心配するようなことはない。ただ、勉強面以外がどうにも不安なんだ。また夏休みのような事が起これば……」


言葉を濁した禄輪さんにごくりと唾を飲み込んで慎重に頷く。

お兄ちゃんが「夏休み? 何かあったの?」と赤くなったおでこを擦りながら間に入ってきたので、「何でもないッ!」と即答する。


「とにかく危険なことには首を突っ込まないこと、無茶しないこと。悪友達にも重々伝えておきなさい」


はい、と首をすくめると笑った禄輪さんが私の頭をぽんと叩いた。