「何あれ。どういうこと」

「あの、気にしないで。仕方ないことだから」


苦笑いで頬をかく。


「仕方ない? 何だよそれ。気にするに決まってるだろ。あれどう見ても巫寿に向かって言った言葉だよな。婚約者ってことは、また鬼子か?」

「違うの。その……説明しにくいんだけど今ちょっと問題があって、微妙な立場っていうか」


いっそう顔を険しくした鬼市くんが私に一歩詰め寄る。俯きかけたその時、次の授業の開始を知らせる鐘が鳴り響いた。

とりあえず教室戻ろう、と声をかけると鬼市くんは渋々頷く。


少し心配そうな目で私を見て、教室に向かって走り出した。