「薫先生ってなかなかめちゃくちゃだな」

「あはは……」


薫先生と三人で何とか松の木を元に戻し、教室へもどる廊下を歩きながら鬼市くんがそう言った。

会ってまだ数日しか経っていないのにめちゃくちゃ認定されるなんてどうかと思う。間違いではないけれど。

思い返せば入学初日に「経験を積ませるため」と称して任務に連れていかれたり「荒療治」と言って牛鬼に私たちを襲わせたり、とでもないことばかりされてきた。

今がこんな感じじゃ、学生時代なんてもっと酷かったんじゃないだろうか。


「鬼市くんの担任の先生はどんな人なの?」

「かなり変わってる人だな。そういう意味じゃ薫先生と似てるかも」

「お互い苦労するね……」

「だな」


顔を見合せてクスッと笑う。

そんな風に談笑しながら校舎の中へはいると、あちこちからチラチラとこちらを伺う視線が向けられた。


「ね、あの話ほんと?」

「神楽部の子から聞いたからホントだって」

「同級生だけじゃなくて他校の男の子にまでたらしこんでるって事じゃん」

「しかも婚約者を蹴落としたらしいよ」