「大切な友達もできたし尊敬してる先生もいるの。簡単に辞めろなんて、言わないで」


唇を噛み締めてそう呟く。震える拳をきつく握った。

最初は禄輪さんに言われて決めた道だったかもしれない。けれどその先で、私は私自信で進みたい道を見つけ始めている。

まだ迷うことは沢山あるし勝たんな事じゃないけれど、今はそうなれるように神修で頑張りたい。みんなと一緒に研鑽したい。


「そ、それでも駄目って言うなら私────」

「ちょっ、ストップストップ! 落ち着け巫寿!」


出て行く、と叫ぼうとしてお兄ちゃんが慌てて立ち上がった。


「ったく、今"出て行く!"って言おうとしたろ? 怖がりのくせに思い切りがいいのはホント昔から変わんないね……」

「その思い切りの良さはしっかり泉寿(せんじゅ)の遺伝子を受け継いでるな。諦めろ、祝寿。椎名の家系は兄が苦労する運命なんだよ」


ハッハッハ、と声を上げて笑う禄輪さんに、「笑い事じゃないですよ」とお兄ちゃんは疲れ果てた様子で呟いた。

話の展開が読めずにオロオロと二人の顔を交互に見ていると、お兄ちゃんが少し乱暴に私の頭を撫でた。


「意地悪な言い方して悪かったよ。でも俺や禄輪さんに散々心配かけたんだから、これぐらい甘んじて受けなさい」


え?と目を瞬かせる。

禄輪さんがテーブルに頬杖をついてにやりと笑った。


「この一年巫寿に起きた出来事を思うと、私も祝寿も新学期に快く神修へ送り出すことは難しい。だから私たちに心配されないくらい、今後もしっかり研鑽して学びを深めてきなさい」


え、と目を丸くする。