『────アハハハッ! それ間違いなく巫寿に嫉妬してんじゃん!』

「笑い事じゃないよ恵理ちゃん……!」

『はぁー、私の知らない間にそんな面白いことになってたなんて!』


その日の夜、夕飯とお風呂を済ませた私はすぐに恵理ちゃんに電話した。

話を聞くなりブハッと吹き出した親友はおそらくお腹を抱えて転げ回っている。

笑い事じゃないのに……。


「あの後鬼市くんにも謝られて余計気まずかったんだから……」


夕飯の時の出来事を思い出す。

いつも通り大広間の隅っこで皆と夕飯を食べていると、お膳をもった鬼市くんたちが私たちの元へやってきた。

鬼市くんの後ろには、私のことを貧相なちんちくりんと言った鬼子ちゃんも。『巫寿、ちょっといいか』そう声をかけられて箸を置くと、鬼市くんが鬼子ちゃんを押し出す。

『ほら鬼子、巫寿に謝れ』

『嫌です! 私は椎名さんに事実を申し上げたまでですもの!』

鬼子ちゃんが私の苗字を呼んで、今度は嘉正くんたちがヒッと息を飲んだ音が聞こえた。鬼市くんの無表情が、怒りの表情に変わる。

『いい加減にしろよ、鬼子』

お腹のそこに響く太い声に、周りにいた私たちまでぶるりと震える。