結局刺さるような視線を最後まで感じながら練習は終了した。

皆はすぐさま鞍馬の神修の部員たちに話しかけに行く。私もその輪に交じって話を聞きたかったけれど、ゴールデンウィーク前の雰囲気を思い出し気が重くなる。

またタイミングを見計らって、鬼子ちゃんに声をかけてみよう。

そう思って練習室から出ようとしたその時。


「椎名巫寿さんってあなた?」


突然後ろから名前を呼ばれた。

振り向くと鬼子ちゃんが真っ直ぐと私を見据えて立っている。あまりの眼力に一瞬たじろぐ。


「あ、えっと……私が椎名巫寿です」

「そうですか」


鬼子ちゃんが分かりやすく私を上から下まで見た。

そして無表情から眉間に皺をぎゅっと寄せて私を睨む。


「私、あなたのこと受け入れられません」


一瞬何を言われたのか分からず「へ?」と間抜けな声が出た。それが余計に鬼子ちゃんの癇に障ったらしく眉尻がピクリと動く。


「どうしてあなたみたいな人を鬼市さんは……理解に苦しみますわ」

「えっと、あの……?」


全く話が見えてこない。鬼子ちゃんは何の話をしているんだろう。


椎名(しいな)さん」


周りで興味津々にこちらを見ていた皆が、驚愕の表情で息を飲んだ。

神修で苗字を呼ばれることが久しぶりで、一瞬反応に遅れた。「は、はい」と恐る恐る鬼子ちゃんを見る。