誉さんとはその後、一時間程度お喋りをしてその日は解散になった。

終始穏やかな雰囲気でのんびりとお話しされていた誉さん。穏やかな人だけれどその見識はとても深く、たった一時間程度喋っただけで彼女がどれだけ優秀な神職だったのかが分かった。

泉井誉さん、三代前の審神者。志ようさんの前の前の審神者にあたる。

彼女は専科を卒業してすぐに審神者になり、それから四十五歳までの間をかむくらの社過ごした。そして次代の審神者が選ばれると同時に引退し結婚して、今は神職の関係者として奉仕しているのだとか。

今は審神者の席が空いたままだし私が知っている審神者といえば志ようさんくらいだけれど、思えば審神者だって代替わりする。審神者を引退した巫女がいてもおかしくない。

にこにこ笑いながら色々教えてくれた誉さん、ちょっと不思議な感覚だった。


『それで、巫寿ちゃんは先見の明をお持ちなんですってね』

そんな問い掛けにひとつ頷く。


『授力というのは基本親から子へ引き継がれ、その力の使い方も親から子へ口伝される、というのはご存知かしら』

『はい』

『でも一部の授力保有者には親から遺伝した訳ではなく突発的に授力が生じた、という例もあります』


来光くんが脳裏に浮かぶ。

来光くんは神職の家系ではなく言霊の力と授力も持っていた。