「俺は信田妻(しのだづま)一族の信乃(しの)や。お前らと同じく17歳。よろしく」

「信田妻つうと、妖狐か!」

「そ。今はお前らに合わせて人型に化けてる」


妖狐の一族!

社頭で見かけることは何度かあったけれど、こうして面と向かって会話するのは初めてだ。

髪色や瞳の色が黄色っぽいところ以外は、他は私たちとなんにも変わらない。


「耳とかしっぽは出しっぱなしにしねぇの?」

「妖がようけおる時はどこの一族か分かりやすいように出しっぱなしにするけど、必要ない時はしまってるんや」


「へぇ〜!」と皆の声が揃う。

信乃くんは「お前ら間違いなくええやつらやな」と小さく吹き出した。


「鬼市とは知り合いなんやろ?」

「そうそう! 一年の三学期にあった神社実習で偶然会ってさ〜! な、鬼市!」


鬼市くんがこくりと頷いた。

神社実習でお世話になった"まなびの社"の節分祭で、毎年鬼役を任されているのが八瀬童子一族。鬼市くんがいる鬼の一族だ。


「高等部一年のクラスに八瀬童子の女鬼がいるから、そいつとも仲良くしてやって。巫寿」


女の子の妖か。寮で会うだろうし、仲良くなれるといいな。

もちろんだよ、と頷くと鬼市くんはほんのすこし表情を緩めた。


「それで────」


皆の視線が白髪の彼に向けられた。

ぼんやりと窓の外を眺めていた彼は、視線を感じとったのかゆっくりと振り向く。