「……うん。今行く」
聞いたことのある声に「うん?」と首を傾げる。
木琴みたいなくぐもった柔らかい特徴的な声、この声って確か────。
教室へ入ってきた青年の何色にも染まらない白髪がサラリと揺れた。黄色っぽい色をした目を伏せて、ゆっくりと中へ入ってくる。
「あ」と思わず声をあげると、男の子が少しだけ顔を上げる。目が合うと彼は「……君、昨日の」と小さく呟く。
「三人は後ろの空いてる席ね。じゃあ、時間あげるから適当に交流深めな」
薫先生が手をひらひらさせて教室から出ていく。
三人は各々に空いている席に腰を下ろすと、皆一斉に立ち上がって三人の周りを囲んだ。
「俺、慶賀! お前は? どこの一族の妖!?」
「二年は3人だけなのか!? てか鬼市以外の二人髪色派手だな! いいな!」
「鞍馬の神修ってどういう所!? デザート出る!?」
一気に質問退会が始まって、そういえば初めて鬼市くんに会った時もこんな感じだったことを思い出す。
黄土色の髪をした男の子が「お前ら落ち着け」と楽しそうに笑った。