それから何時間かたった頃、コンコンと部屋の扉がノックされてお兄ちゃんが顔を覗かせた。


「恵理ちゃん今日うち泊まるの? もうかなり遅いし、泊まるならお家の人に連絡しなよ」

「え、もうそんな時間!?」


時計を見上げると22時を過ぎた頃だった。


「明日部活あるし今日は帰る! ありがとイコくん!」

「ん、なら玉じいが家まで送ってくれるから準備できたらリビングね」

「えー、別に一人でも帰れるのに〜」

「いいから言うこと聞く」


はーい、と唇をとがらせた恵理ちゃんはテキパキ鞄に荷物を詰めると立ち上がった。

話の続きは次会う時ね、と約束をして玄関まで玉じいと恵理ちゃんを見送る。遠ざかっていく二人に大きく手を振り、家の中へ戻った。

居間に戻ると禄輪さんとお兄ちゃんが机を挟んで座っている。


「巫寿、ちょっと話したいことがあるからこっちに来てくれ」


禄輪さんにそう呼ばれて、そういえば今日はその用事で家に来ていたことを思い出した。

お兄ちゃんの隣に座れば、禄輪さんは真面目な顔で私たちを見た。


「さて、今日来たのは他でもなく巫寿のことについて話すためだ」

「私のこと、ですか?」


ああ、と禄輪さんがひとつ頷く。そしてテーブルの上に手をついて一つ息を吐く。