暫く車に揺られていると、恵衣くんが読んでいた本から顔を上げてちらりと私を見た。


「実家帰ってたんだろ」

「あ、うん。そうなの。薫先生に許可もらって」

「あっそ」


聞いてきたのは恵衣くんなのに、かなり素っ気ない。

恵衣くんはもう一度私の顔をちらりと見て本に目を落とす。


「気が抜けた呑気な顔だな」


一瞬理解できなくて、数秒後に馬鹿にされていることに気がついた。


「ひどい……!」

「辛気臭い顔で同じ教室に居られると気が散るんだよ。間抜けな顔でいるほうがまだマシだ」


だからってそんな言い方しなくても、と言いかけて気が付く。

これってもしかして、ものすごく分かりにくいけど心配してくれてたって事……?

私が落ち込んでいたのも、実家に帰ったことで少しだけ元気になったことにも気付いてそう言ったという事だろうか。


「あの、心配かけてごめんね。ありがとう」

「別に」


恵衣くんはムスッとした顔でそっぽを向いた。

どうやら私の予想は当たっていたらしい。