長いようで短かったゴールデンウィークの最終日、お兄ちゃんと恵理ちゃんが鬼門の前まで見送りに来てくれた。
「体には気を付けてな。嫌になったらすぐに学校辞めて帰ってきていいからな? お兄ちゃんは巫寿一人養うくらいどうって事ないからな? ああそうだ、その時は二人でスイスに山小屋を建てて暮らそうか! 山羊飼ってチーズとか作ろうか! おっきい木にブランコとかかけて、のんびり二人で暮らそうか!」
名案とばかりに手を打ったお兄ちゃんに苦笑いを浮べる。否定するともっと面倒くさそうなので、「考えとくね」と適当に濁した。
恵理ちゃんが両手で私の手を包み込む。
「いつでも電話してね。巫寿が私を必要とするならすぐにでも飛んでいくよ! グールルマップで調べながら!」
「流石に神修はグールルマップには出てこないかな」
二人してプッと吹き出す。そして別れを惜しむようにハグをした。
行ってらっしゃい、とふたりが私に手を振る。少し心配そうにこちらを見ている。それだけ沢山心配をかけたということだ。
元気に手を振って「行ってきます!」と応えた。
鬼門をくぐる。やがてふたりが見えなくなった。
正直、また辛くなってしまうかもしれない。けれど味方でいてくれる人、帰る場所があるということが背中を押してくれるような気がした。